藤麻無有彌の日記:||

藤麻無有彌(とーま・むゆみ)がダラダラしています。

“【佐藤秀峰】 : 『漫画貧乏』読了。”

佐藤秀峰 著、『漫画貧乏』を読みました。

10年後も漫画はあるのだろうか!?
出口の見えない出版不況、台頭する新メディア…描いても描いても、原稿料では赤字続き…この先、漫画界はいったいどうなっていくのだろうか。
海猿』『ブラックジャックによろしく』の作者・佐藤秀峰の漫画の未来に向けた、孤独な挑戦と実験がはじまった。
「売れない、食えない、儲からない!?」
「連載貧乏」という恐ろしい言葉があります。初めての週刊連載。張り切って描いたはいいけど、人気が出ず半年で打ち切り。あとに残ったのは借金だけ…こんな状況を指す言葉です。才能があるのに多くの漫画家が消えていってしまう。そんな夢と現実のギャップ、漫画業界の体質的な“ひずみ"にいま立ち向かう。出版業界関係者、必読の書!! (amazon内容紹介より)


書店でチラッと見かけ、且つ、ネットでの感想を見て購入。

基本、活字ばかりの本書で、漫画は冒頭のプロフィール(佐藤秀峰氏のHPのもの)くらいで、あとは下部の注釈に絵が載ってるくらいのものです。

ぶっちゃけ、
割と単行本が売れた・メディアミックス化された作品を持つ、佐藤秀峰氏でさえ、『そんなもん』しか手元に残らないものなんですね。
やっぱり難点は作画にかかる費用・スタッフの人件費の問題でしょうか。

アナログでクオリティの高いものを出そうとするとどうしても手間と時間がかかるし。ましてはテーマが現実に根ざしてるものだとリアリティが求められてしまう。
これ……、手法自体を変えるワケにはいかないのかね。もう 最初っからパソコンでやればいいのにと思ってしまうんですが。。。
ジャンプSQ.のインタビューに載ってた、きづきあきら+サトウナンキ先生も、すごいときだと連載3,4本くらい月産100近いページを連載されてたと思うけど、2人だけでやっておられるみたいだし、ちょっと前にツイッターで、山本貴嗣先生も『アシスタント使わないで描いてる』というのも見たことがありますが。
(ま、人件費的なコトじゃなくて、雇う際のスタッフの人間性についてから、1人で作画されてるんだったかもしれませんが。)

西島先生の『ひらめき☆マンガ学校』じゃないですけど、絵に関してのハードルを下げたほうがいいんじゃないか、っていうのはこういうのにも関連するワケですが。

うーん、けどこれも作家さんごとのこだわりとかもあるんでしょうかねぇ。
クオリティを落として批判されるのもどうなんだろうとも思うし、ヘタウマだと言うのもどうなんだろうと思うし。
クオリティの高い低いで批難してはいけないけれど、クオリティの高さを求めるなら、その作画サイドの状況も推し量って考えるべき という話になるんでしょうか。
(別に私はどっちでもいいです。描き手自身が楽しく・且つ、納得のいく作品が作れるのなら、どんなものでも構わないと思うので。)

ただ原稿料っていう給料の話になると、勤続年数やキャリアで評価されたり、社会認知度・コミックのセールスで評価されたり。歩合制なのか年功序列なのかよくわからないのはある。

第一、『苦労して描いた』っていうのが前面に出てもどうかと思うし、あまりにも簡素でも『コイツ…テキトーに描いたなw』って叩かれるのも違うし。

新人の頃は時間給800円な。
新人の頃は原稿料1枚5000円な。
“上”にあわせて給料の上限が決められてるからその範囲内で?
……給料の決められ方はよくわからないですね。


ところで、雑誌が売れないこと に関しては、雑誌内のマンガというコンテンツがつまらないんじゃなくて、“雑誌”が面白くないんじゃないの? って思いますが。編集がコンテンツの一つである漫画自体の充実に尽力するのはいいのですが、“雑誌”を面白くしてないから売れないんじゃないの?って。
これはまた後日。


たくさん刷ったほうが利益が出る。というのは小売商売としたら当然ですよね。
この前読んだダイソーの記事じゃないですけど、たくさん仕入れて原価が安くなるのは当たり前だから。
ただ 在庫になるかどうか。売れなかった場合に売価下げて売るとしたら(公式的なコミックスはともかく同人誌だったら言い値で値下げすることも出てくるでしょうから)コトも選択肢に入ると思うのでその際の利益とかもね。



Radioheadがダウンロード価格をユーザーに決めさせる っていうのがあったんだ。へー。
私、結構前に読んだ同人誌についての本で、お客さんに同人誌の本の価格をワンコインの金額で決めさせる っていうのが前あったなー って。それ思い出しましたよ。




P.136『漫画がなくなっても、会社がある限り、私たちは給料をもらえるんですよね』って言葉。
これ、結局、漫画っていうものをどう捉えたいんでしょうかね。
ただのビジネス的なものとしてか見てないのか、作品を大事にするのか、描き手としてはただ自己顕示欲が満たせられたらいいのか。




オンラインコミックに関しては、増えてきてるからこそ厳しいのもあるのでしょうが。
ま、どうしても 赤松先生の“Jコミ”が頭に浮かび、あっちは楽しく面白そうなコトやってるから、どう違うんだろうなー なんて思ってしまったり。



編集の給料についても取り上げられてましたけど、個人的には、どんな作品でもその作品の担当編集者の名前を併記すればいいのに って思うんですけどね。一緒につくってるんなら。(IKKIは表記してますよね。)
『魂込めて作品を作ってる』ことの共同責任を背負うことを 名前を出すことで表明する って大事だと思うんですけど。
(私、爆笑問題好きですけど、爆問名義の本はたいがい太田さんが書いてるみたいだけど、コンビ名義で。権利収入的に、田中なにもしてないのにw ってカンジかもしれないけど、なんかあったときの責任はコンビで平等に取るとかね。)



まぁ、ただ、なにより読んできて、佐藤秀峰先生が実直で漫画好きであるというのは伝わりましたね。ご自身の連載が終わったあとにも給料を出していた っていうエピソードとか。その誠意。

『雑誌に漫画が載るだけでもすごいコトなんだよ!?』 っていうコトと、
『でも生活があるし…お金が…』っていうところ。

結構前に2chかどこかで、
『100万円もらえるのと、ジャンプに(10週打ち切りになるかもしれないけど)載ることができる権利と。どっちが欲しい?』
…というのがあった気がしますが。(あれ、1000万だったっけ…。ま、どっちでもいいか。) 
マズロー的に満たしたいものの順番が揺さぶられるんでしょうかねぇ。



赤松先生のトコを例に出しましたけど、大体読めるならタダで読みたい気持ちはありますよ。
で、漫画読む人って、コレクター癖の人もいるから(つか大半? 私もだけどw)、気に入った作品はパッケージされたものが欲しい。つまり紙の本が欲しいから。
1話30円 って(実際はポイント形式とはいえ)、読み手的にはちょっとメンドクサイんですよね。

たとえば、HUNTER×HUNTERの載ってるときだけジャンプを立ち読みすればいいし。それはタダ。
単行本出たら買えばいいし。

トータル話数の単行本価格を踏まえた上での1話あたりの価格を決めておられると思うのですが、うーん。やっぱり目に見えるパッケージされた本にお金を支払いたいんですよね。

色んな公式webコミック誌でも、無料で見れるところは多いし。雑誌をね。

単行本描き下ろしは原稿料が発生しないということで、『新ブラックジャックによろしく 9巻』は真っ白だったというコトだけど、それでも買うほうは・ファンは描き下ろしの絵をたくさん見たいんですよ。
表紙カバー、カバー裏、カバー自体の裏。単行本巻末など。
単行本化された作品を売る というコトに関しては、そこは作者さんのサービス精神的なものなので、強要するものでもないんですけどね。。。


ダウンロード版600円もあるそうですが、ちなみに私はちゃんと1260円出して本買いましたよ。

漫画貧乏漫画貧乏
(2012/04/17)
佐藤 秀峰

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