藤麻無有彌の日記:||

藤麻無有彌(とーま・むゆみ)がダラダラしています。

“【青山景】 : 『よいこの黙示録 2巻』読了。”

よいこの黙示録 2巻』を読みました。

2012 02 27 よいこの黙示録 2


[ブログ内リンク] : "“【青山 景】 : 『よいこの黙示録 1巻』読了。”"

内容のメインとなるのは、クラスメイトの中でもスポーツに打ち込んで熱血正義感のある五十嵐くんが、伊勢崎が立ち上げた宗教に関わり始めて、五十嵐くんに憧れてた根津くんとの諍い。…になるのですが。


………。

いつもならね、普段どおりに漫画の感想を書くワケなんですよ。
けど ご存知のように作者の青山景さんが自殺されてしまったワケですよ。

うーん。
…とりあえずフツーに書きます。



今巻の内容で先ず面白かったのが、五十嵐くんが伊勢崎の宗教に関わって、勉強を打ち込むようになって、そこを根津くんから『どうしたんだよ!?』的なコトを聞かれたときに五十嵐くんが、

「俺はシューキョーで変わったんだ」

……っていうドヤ顔がクソワロタ。wwwww
あの、ちょっと前に2chで見た、某・就職難にあえぐ男を描いた漫画 ……を思い出して…。www

そして教師サイドでは湯島先生に粘着の気が見られる 盛岡先生が登場。
まさしく見た目も脳も筋肉マッチョな先生で キ・モ・い☆
こーゆーキャラって学校ものでテッパンで存在しますよね。どう粘着するか楽しみでもあるのですが。

本作の話の核となるであろう部分で興味があったのは第12話でのエピソード。
『暴力をふるうことが避けられない事態』
…に対しての森ユリカの話。

これはそもそも人間を性善説で考えているのか、性悪説で考えているのかが森さんのおばあちゃんの思想にも関わるところで、
たとえばキリスト教における『隣人を愛せよ』っていうことと、『人を見たら泥棒と思え』って言葉が日本にあったり(この言葉って出典どこなんだろ?ことわざ?)、とか。(対比として もっと適切な言葉が思いつきませんが。)
ここで森ユリカ(のおばあちゃん)が言ってるのは、『“私”が指示したら“始末”もやむなし』というコトで、人間の行為をどこまでの見識で酌量するのかは個人の基準に委ねられることに。
これは広義の認識ではなく、どこか独善的でもあるので。ここが森さんを教祖とする宗教にどのような影響を与えるかが、今後楽しみでもあります。

第13話ではほかのクラスメイトに勧誘してますけど、なんで勧誘するんでしょうね。
単純に遊び仲間を増やしたい的な小学生の純粋な考えではない部分もあると思うので。信者を増やすことになんの意味があるのか。たぶんお金の考えは伊勢崎には必要ないハズなので。価値観の共有できる人は多いほうがいいのかもしれないけど、それを[意図的に増やす]行為はどういうコトなんだろう、と。ここの疑問も楽しみですね。





………楽しみだったんだけどなぁ。
…以上、ここまでフツーの感想でした。

今後、いわゆる競争の激しい大手出版社の青年誌での連載が、打ち切られることなくどこまで続くのかは分からないところがありますが、せめて伊勢崎が『なぜ宗教を立ち上げたかったのか』『なぜ自前の神がほしかったのか』その疑問だけは今後の連載で解消してほしかった部分です。(この2点はそれぞれが独立してる動機のため、個々での回答がほしかった。)



本書に収録されている、プロットの今後の展開の草案について気になるところもいくつかありますが。

近親者の死・ウサギの死体のくだりについてとか、そこを宗教性にダイレクトに繋がるんでしょうかね。単にカワイソウとかそんなんじゃなくて? じゃあ、なんでカワイソウと思うのか をどこまで突き詰めていくのかが気になるところで、“憐憫”なのかとか。自己の感情がどう生み出し(心の中に生まれる、“感じる”瞬間自体。)どう表出するのか。とか。そこに宗教性が必要なのか、とか。

プロットの最後には伊勢崎の真意についての案も書かれてありますが、“人類学的な重要性”についてが一番カッチリ嵌る理由ではありますが、そこに説得力がいるものね。
まぁ、漫画的にはこういう理由は陳腐なものであるほうが…不純な動機でトンデモナイことやってしまうほうが展開的に滑稽でオモシロくもあるので。真意は分からずじまいですけどね……。

ほかの宗教とどう付き合うかとかもね。舞台が日本なので…や、日本だからこそ薄い宗教認識、せいぜい仏教っぽい感じでクリスマスする日本だからこそ先の展開は気になりますし。

個人的には、ニーチェの『神は死んだ』も取り上げてほしくて、一切なんのよりしろ(依り代)もなく生きていくことの是非や、無意識のよりしろの解明とかもやってほしかったですね。


……実に残念です。
表紙絵が違和感あるのですが、キャラクター資料集のイラストそのままが表紙で使われたというコトは、連載前に描かれたものでしょうね。湯島先生、伊勢崎、五十嵐くんの絵に違和感ありましたから。1巻の表紙絵のほうが2巻作中の作画に近かったもの。
あと着色が違うこととかね。ツイッター上での本書の感想で見たけど(『ツイッターがソースかよ!?』とは言わないの☆(笑))、1巻のように肌色が黄色寄りなのが青山氏っぽい、っていう。

あと、本書が今年(度)冬(2011年冬)に刊行されることが秋口に発表されたとき、ツイッター上で青山氏が自ら告知していて、読者(フォロワー)と単行本オマケページの内容について話されてたようで、『登場キャラの日常風景を切り取った超短編を収録することに致します。』と本人がツイートされてるのですが…。
これも実現されなかったのが残念です。

『何故』は尽きません。

ラストページには昨年の東日本大震災の際に描かれた漫画が1ページ。

いつか、このつづきをどこかのつながりの中で。

よいこの黙示録(2) (イブニングKC)よいこの黙示録(2) (イブニングKC)
(2012/02/23)
青山 景

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