藤麻無有彌の日記:||

藤麻無有彌(とーま・むゆみ)がダラダラしています。

“【9GOATS BLACK OUT】 : 『CALLING』を聴いた。”

9GOATS BLACK OUT、2ndフルアルバムで且つ、ラストアルバムとなる『CALLING』を聴きました。

ぶっちゃけ、なかなか向き合えなかった作品です。
これまでの9GOATS BLACK OUTにずっと触れてきたからこそ、「なんで?」っていう感じは否めませんでした。

そして最初に通して聞いてみたときには、あまりの9GOATS BLACK OUTの“らしく無さ”にビックリしたというか…。良く言えば“新境地”なんですけどね。
限定盤にDisc 2があるとはいえ、メインは…Disc 1は全11曲。およそ40分で駆け抜けてしまう。

で、時間を置いて、発売してから年を跨いで、歌詞をちゃんと読んだり、公式で発表された解説本『LOG』を読んだりして、ようやっと向き合えてきた次第です。

解散を決めてから…解散が決まってからこうしてオリジナルアルバムを作成する ってどういう心境なんでしょうね。



ryoさん(のインタビュー)曰く、冷たい氷の張った季節・世界から次第に春に向かって芽吹いていく…っていう全体の流れだそうで。

ああぁ、今テレビでlynch.が映ってるわ。シングルタイトルの『BALLAD』が“GULLET”に聞こえたわ。うわぁぁ。なんという因果。(←



1曲目。“you(ユウ)”
曲としては静かに入っていって、徐々に盛り上がっていくんだけど、盛り上がっていくというよりか感情に乖離が生まれていて、頭が冷めてるのと、心の中で寒気が熱量になってしまってるようなもどかしい感情が曲自体に出てる気がしました。
歌詞はインタビューにもある通り、『上澄み不感症 そうだった気がしないか  幕が上がってそれが 降りるまでの性(せい)』っていうところがよく聞き取れて困る。(苦笑)
病気で他界したryoさんの父親を想ったことでもあったり、バンドが解散する心境も含まれてるそうですけど、『幕が上がって〜…』のあたりが、単純にステージでの…ライブでのパフォーマンスが生涯の全てであるとも言えるような儚さとも捉えられる気がして、寂しい歌。

なんか冷めてるんですよね。これから終わることに対して、すっごく俯瞰で冷めてる。
「どうせ〜」的な。「所詮〜だろう?」みたいな。
でも薄っすら願うんですよね。


2曲目。“dye an unease (ダイ・アン・アンイーズ)”
『不安に染める』という意味だそうで。

よくあるアルバム2曲目ポジションのロックナンバーとして受け止めました。
こちらの歌詞もネガティブ系な。けど もがいてる感じかしらね。


3曲目。“BLANK BLACK (ブランク・ブラック)”
楽曲はミドルテンポでズンズン攻めてくるような。

“KATAN DOLL”って何かと思ったんですけど、天野可淡さんによる球体関節人形のコトなんですね。
球体関節人形に対しての造詣は無いんですけど、なんかで見たような気がするんですよねぇ。“D[d:]”さんだったか、雨宮処凛さん関連の本だったか、イラスト季刊誌“S-エス-”の初期で見たんだったか忘れましたけど。

インタビューによると、タイトルの『空白の黒』は、色によるイメージで、一般的に白がポジティブで黒がネガティブだと受け止められがちだけど、白を含んだ単語でもネガティブ要素のあるものがあるから、それはどうなのか?っていうところから、だそうで。(インタビューから改変して引用)

冒頭のメロディに対して乗せる歌いまわしが特徴的で好きなんですけど、メロディありきで歌詞を乗せたとしても、歌詞の意味合い的にこれも前2曲と同様に突き放してる感じがあるので、そこがうまくハマってるように思いましたね。
インタビューによると、解散が決まってからサビ部分を歌詞の書き直しをしてるとあったので、この部分が突き放しでもあるし、自由を委ねられているとも取れるので、寂しくもあるんだけど、そこに寂しさを抱かせてしまうのも、こっちの勝手な都合だな とも思えるもので。
なんとも。


4曲目。“追憶は罪(ついおくは つみ)”
このエントリの最初にも書いたんですけど、最初は歌詞を読まずに聴いてたので、このタイトルも『想うコトがいけないこと』みたいな解釈をしてたんですけど、
歌詞読むと、インタビューにもある通り、まんまの意味で、『罪な人ね…』とかそっちの悲しさを孕んだ罪だとゆー。
静かなバラードですけど、曲の最後の“ジャーン!”ってなってるところは激情を表してるのかしら。



5曲目。“Panta rhei (パンタ・レイ)”
『万物流転』という意味だそうで。
そのタイトルの意味込みで、この歌詞は どストレート。
鍵盤から始まる静かな曲で、曲自体からも無常観が漂う。のちに映像でも併せて見る機会があるんですけど、ドンピシャの好きな世界です。
色んな見てきた景色が巡るのを、今の自分がただ眺める・ただ想う っていうのはどこか物悲しいものですよ。
その触れ合った万物に『袖振り合うも他生の縁』があってね。
物悲しいけど、じんわりと有り難いなぁ、と、感謝が沸いてきたりね。


6曲目。“Shut up"G"  (シャットアップ・ジー)”
前作『TANATOS』で言うと、“Who's MAD”みたいな立ち位置の曲になるのかしらね。
激しい曲に歌い方もすごいので…グロウルっぽいような?まさにシャウト、デス声も交えてるので、歌詞は全然聞き取れないです。(苦笑)
歌詞の解釈をマヌケに解釈すると、「うっせ!ばーか!ばーか!!」みたいな歌詞だと思いますw
たぶん合ってると思うww


7曲目。“Canaria  (カナリア)”
メロとサビの部分が曲調が全然違うんですよね。サビというか「ありがとう ありがとう」の部分とかね。
曲の印象の残り方が違う っていうか。

この歌で歌ってるのは、誰視点なんでしょうかね。「ありがとう」を願ってるのか、願ってる対象が居なくても言い聞かせてるのか。


8曲目。“Asche (アーシェ)”
ドイツ語で『灰』という意味らしいです。

ところでこの曲、前曲の終わりから繋がってるように聞こえて、どこから8曲目になったのか始めは全然気付きませんでした。。。
『LOG』を読んで分かりやすく理解できたんですけど、“灰かぶり姫=シンデレラ”の話なんですね。

前半の曲にも、願いを感じさせる終わり方はあったんですけど、この曲から以降が具体的に(?)光を感じさせる方向へ向かうような。


9曲目。“揺り籠(ゆりかご)”
なんだかジャジーな…ラテンな?雰囲気漂う曲。
「\チャッチャッ/」っていう手拍子も入るので。
歌詞解説読んだ上で歌詞自体を見ると、これもそのままの曲でしたね。
「ゆっくり休んでいいんだよ おやすみ」っていう。(インタビューより)
歌詞カードの最後の節のところで、英語詞2行と日本語詞2行になってるんですけど、どっちも優しい言葉ですからね。


10曲目。“rip current  (リップカレント)”
『離岸流』という意味だそうで。
これはすっごい好きな曲です。ポップに開けていて。まさに光の方向に開いている曲ですね。

個人的に聴いている景色としては“パンタ・レイ”の対になるようなイメージなんですよね。
“パンタ・レイ”はざまざまな景色が過去の憧憬とともに巡るんですけど、この“リップ・カレント”の中では…まぁ、歌詞中に「波」とかあるからなのでしょうけど、そういう何もないところに佇んで、けど明日はあるし っていうような。
それが、現状、絶望か希望かは断定できないんでしょうけど、少なくとも『明日はある』っていう事実だけは明確に示してくれる。そんな印象。


11曲目。“8秒(はちびょう)”
英語詞の部分は賛美歌のような?
歌詞内容はもう全部ですね。このアルバムにおける全ての内容を物語ってるようでもあり、ナインゴーツの活動で示してきた全てのコトを表しているような。

一瞬と永遠がどちらも大切で、万物が訪れる運命や辿っていく揺るぎようも無い事実。

明ける明日への不安に眠る前に掛ける最後の優しい言葉が、明日を輝かす糧ともなれば、
永遠に眠ってしまうものへ対しての最期の言葉が安心を誘ってくれるかもしれない。…親不孝をしていても最後にかける言葉が感謝や優しいものだと安心して天国へ逝ける とも言うらしいですからね。

一瞬が永遠をつくる、一瞬かと思えたものが永遠なもののように感じる。

そしてこれを繰り返すことで日々を紡いでいく ともいえるような。

終わりであって終わりでは無い。
歌詞込みで聴くと、9GOATS BLACK OUTらしいアルバムだなぁ、とも思えるものでした。


で、
Disc 2は、“甘美な死骸”、“any”のMVと、本編未収録曲で、先ず“in nirvana(インニルヴァーナ)”と、“true colors  (トゥルーカラーズ)”が。
歌詞はCD盤面が収まってるところに収録されてたけど、これは解釈とかはよくわかんないですね。
“トゥルーカラーズ”が『正体』『真相』という意味でもあるそうなので、そういうのを含ませて読み込むと面白いのかもしれませんけど、聴きざわりが良いのでそのままでいいのかもしれません。

ボーナストラックがさらにリミックスで収録されてて、初代ドラムのakiさんによる“Ballad No.2 Op52 in B minor Den lille Havfrue”と、akayaさんによる“in the rain -remix-”
…どっちもバラード。どちらも初期曲。
“in the rain”は初期曲の中でも好きな曲なので、こうしてakayaによるリミックスというのもまた良いですね。



意味を捉えながら聴くと、すごく残る歌・曲ばかりなんですよね。
ナインゴーツらしくない って書きましたけど、だからこういうのはもっと後に出して欲しかった っていうのがあるんです。
何枚か、ナインゴーツらしい重厚な世界観の作品を出した後で、変化球を投げてくれるような。
そういった可能性を提示させてくれる作品だからこそ、尚、このアルバムがラストオリジナルアルバム っていうのが…実になんとも言えないんです。

まして、“矛盾”を一つのテーマにして、終わりと永遠を歌ってるワケだからこそ、尚のこと。
utaさんが『LOG』のインタビュー中で、「これは5年後…結成から10年を経た作品」という発言があったと思うんですけど、だったらそこまでの経過込みで、この9GOATS BLACK OUTというバンドを追っていきたかったな っていうのがすごくありますね。
なによりryoさん、『ROCK AND READ 030号』で個人インタビュー受けた際に、
「10年やる」
って言ってたじゃないですか!?

非常に惜しいバンドですよ。もっと作品をライブを見ていきたいバンドなのでね。
実に良作ですよ。このアルバムは。

CALLINGCALLING
(2012/12/19)
9GOATS BLACK OUT

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