DIR EN GREY、NEWアルバム、『DUM SPIRO SPERO』を聴きました。
ラテン語 キケロの格言より、『息ある限り、希望は捨てず』と題されたアルバム。
どうしても震災のこととか考えてしまいますが、収録曲はいつも通り、いつも以上に凶悪に。
タイトルに悪魔の名を冠したものが3タイトルあるなど音は重い。
特に京さんのボーカルスタイルが多種多様。
シャウト、ホイッスル、グロウルなど、1曲、1フレーズの中で変幻自在に。
事前の雑誌インタビューなどで読んだ通り、“うるさい”、“間口が狭い”作品にはなってます。楽曲の構成自体も、メロディがあって、サビがあってという単純な構成ではありますが、全然聴きにくくは無いんですよね。
聴いてて有り難いのが、日本語詞が今回多いことと、歌詞カード自体が見易いこと。
これのお陰で、主に詩の、作品世界に浸ることができました。
で、どこかの某・掲示板であった、タイトルの意味を参考にしながら、あと、wikiで見た付け焼刃の知識を使いながら 曲を見ていくと、
1、『狂骨の鳴り』
“狂骨”自体は、wikipediaによると、白骨の妖怪とか。けたたましい、激しい念・怨念を持ったものとか。
曲自体はSE曲で、冒頭はキレイな旋律かと思ったら途中から一気にヘヴィな音が鳴り響く様相。
2、『THE BLOSSOMING BEELZEBUB』
“開花した 蠅の王(悪魔)”
なんというか、気持ち悪い曲(歌)だと思います。
既に崩壊した世界の中で すごく脳内がクリアに冷淡に捉えているような感覚。
この歌の主人公が蠅に憧れている様子がわかるのが 判るのが すごくイヤ。
ちなみに米は あまり高温多湿の環境の中に置くと自然と中から蟲が湧くんだけど、“雲が殺した満月” とあるように、劣悪な環境の中に主人公自身も居るのだから、俺に羽ぐらい生えてもいいじゃないか。…とでも言うような。
崩壊した世界で空ぐらい飛べればいいのに、アイツら(湧く蠅)でさえ自由に羽 生やしてるんだぜ。…って。
“ライスも口に頬張り”が 渇望してる様子を伺わせる。
3、『DIFFERENT SENSE』
こちらは過去エントリで書いたので割愛。
アルバムver.になって、冒頭のドラムなどの変化があったり。
4、『AMON』
ソロモン72柱の悪魔の1つ。“七つの大罪”で言うところの“強欲”に相当するらしい。
京さんのボーカルが次々と変化する楽曲。
(楽曲自体は完全生産限定盤のシンフォニックver.の方がカッコ良くて好きですが。)
…この曲、いつ完成したんだろう。
詩を読む限り、その“強欲”と照らし合わせると、原発に関連するものに捉えられなくもないんですよねぇ。。。
あ、『DIFFERENT SENSE』と共に制作初期か…。うーん…。
“腐ってく未来なら 贅に埋もれて餓えは口を裂く” とか、“舌舐めずる変貌に薬漬けの大地で これ以上何を殺し、奪えばいい?”
特に後者がね。 土壌汚染されたみたいな感じで、けど、関係の無いところで利権ばかりが巡り、現場を蔑(ないがし)ろにしてるようにも取れたんですよね。
それ以外のフレーズから原発関係無しに考えてみると、
そういう色々クソみたいなのはあるけど、仕方なく頭を洗脳された状態にして ただ生きればいい・生きるだけでいいという諦観のような。(“夢を焼かれ〜…”とか、“気が違う鈴揺らす〜…”とか。)(“強欲”とは真逆の意味で。)
あとは『DIFFERENT SENSE』に引き続き“神殺し”という単語があるのも気になりました。
5、『「欲巣にDREAMBOX」あるいは成熟の理念と冷たい雨』
“DREAMBOX”が、“保健所等の動物を殺処分するガス室”だそうで。
…ところで“DREAMBOX 保健所”で検索したら、某大学の“犬猫殺処分を減らすことを目的とした団体”というのも出てきて…なんとまぁ……。
曲・詩 自体はタイトルの通りだと思います。
曲の雰囲気も陰鬱で閉鎖した感じ。けど、早口でまくしたてるように詩を吐いてる部分は、理性では覆えない、「仕方ないんだから言うこと聞けや!」みたいな。
“終焉を目の当たりにしても笑え”ってトコとかね。
そしてこれ どこ視点で見ればいいのか困るのがタイトルの“冷たい雨”で。
処分されてるほうの涙とも取れるし、処分してるほうの涙でもあるし。
“成熟の理念”っていうのが、処分してるほうが冷酷にその行為(処分)をしてるようにも考えられるし、だからこその涙が芝居がかった涙であるとも取れたりするから困る。“捨てる程の 愛”だしさ。
逆に、処分されるほうの側は、自分を受け入れた覚悟からの“成熟の理念”という涙かもしれないし。
で、この“ドリームボックス”も、犬猫を殺処分ではなく、当然人に置き換えるコトが出来るんでしょうね。
社会の仕組みから外れた(飼い主のいない)人間を閉じ込めて処分。
けど処分などと思わせてはいけないように。この措置を必然であるかのように思わせないといけないような。(“DREAMBOXにありったけの希望を”から。)
6、『獣慾』
これは分かり易い。
詩で一目瞭然。
エロです。(笑)
曲自体も荒れ狂うような。けど凶暴性がエロチシズムの方なんですよね。
…けど、この曲の主人公がヤってるわけじゃないんでしょうね。詩の感じからして。きっと。
7、『滴る朦朧』
これがまだ読み解けない。
単純に、『獣慾』の続きでエロになるのかな。
『獣慾』の続きで“朦朧”ですから、なにか真実味が無いものに…そんな性欲に浸ってる ってコトなんでしょうか。
“薔薇を突き刺し 拭い取る泥”というのが気になって。
須藤元気氏の“今日が残りの人生最初の日”という本に、“薔薇拭き”というのがあって、それを行うことによって、ネガティブなイメージを払拭する というのだそうだ。
『獣慾』で、何処かの性行為に聞き耳立てているようなもの(もしくは妄想上の)の、犯したい異性がいて、それに対しての不安を払拭し、いざ重なろうとしてるのかもしれない。
けど、詩で“残飯”とか“絞りカス”で。実体が無い相手だったのか、実態があっただけなのかは分からないところですが。
8、『LOTUS』
好き☆
やっぱ この曲は大好きです。
アルバム収録に際して、ミックスされてるそうですが、私はあまり分からなかったです。
9、『DIABOLOS』
“悪魔”
…なんだけど、これもまた解釈に困る………。
10分近くある作品で、『VINUSHKA』のような曲構成でもあると思います。
“知っていただろ?「この世界は残酷だ」” があるのが分かり易いというか。
この曲で言う、“悪魔”が、語りかけるのも、語りかけられるのも自分自身なんだろうな。
先にはきっと光があるけど、これまでの闇が足を引っ張るから、現実を信じたくもあるけど、見限ってしまいたいような。
10、『暁』
メロディとかリズムが変調していたり、京さんのボーカルもグロウルとかデス系では無いんだけど、ハイトーンから中低音の声が多様に使われていて、京さんのVoiceという楽器がうまく使用されてて個人的に好きです。
詩はこれもまた相反するものがぐちゃぐちゃに表われてるような気がします。
11、『DECAYED CROW』
畳み掛ける轟音と、シャウトにグロウル。
“腐ったカラス”という意味で、カラスは食べ物とかゴミとかを荒らすようなもので、そのカラスを腐敗した と形容する。
“隠しきれずに露わになった 理想”という詩と、この詩に到るまでのエグい表現とかがあったけど、それ自体が真実で、臨んだものだろう? …とでも言うような。
ゴミ散らかして、汚くしたんじゃない、キレイにしたんだ、人間の核を。と。
カラスの行いを逆説に捉えた行いだから 腐ったと称したんでしょうかね。
バラバラ・グチャグチャにしなければ、このまま盲目的に生きていられたのに。
12、『激しさと、この胸の中で絡み付いた灼熱の闇』
7弦で録り直しと、ミックスがされてるそうな。
13、『VANITAS』
ラテン語で、“空虚”の意味だそうで。 バラード。
この曲のプリプロ中に東日本大震災があったそうな。
それぞれ個人の想う“君”へ向けての想い。
喪失感に襲われているけど、ただ 願う思いの優しさがすごく溢れてる。
ディルのバラードは優しさが突き抜けてるわ。
これ好きですわ。
14、『流転の塔』
流転=“移り変わって止むことがないこと” 仏教語。
このブログでシングルの感想を書いていた時から思ってたことで、今作の収録作にもあるんですけど、この曲に到るまで、歌詞の終わり方が曲のフェイドアウトと共になってるようで、
曲自体は単体で完成されてるのに、詩がどれも楽曲単体では完結してないものばかりのようで、言ってしまえば<続く>で終わってしまってるような歌ばかりの印象を持ってたんですね。
この曲も制作初期の頃にあったそうですけどね。
でも、この曲からは先へ続かない。物語としてはこれで終わりで、終わりだからこそ此処から新たに始まる・歩き出す、そんな曲。
goo国語辞書で調べた、“流転”の意味にもう一つ、“六道・四生の迷いの生死を繰り返すこと。生まれ変わり死に変わって、迷いの世界をさすらうこと”とあって、
それって、この曲に収められてた楽曲が表してた全てのものなんですよね。
“迷い”って。性欲・強欲に捉われたり、悪魔が囁いたり。
そんな世界が、また生き直してもまたやってくる。
そんな世界を知ったのに、また体験しなくてはいけないなんていうのは、なんて苦痛の闇なのか。とも考えられるし、
だからこその 今を生きることが出来ることを知った その光もある。
英詩の部分が、これは誰もが必然にあるものだよというのを表しているのかしら。
非常に重厚な内容でした。
完全生産限定盤のDVDのインタビューにありましたけど、京さんはいつも通り解釈は受けて側に委ねるとあり、
Toshiyaさんが 「音楽で世界は変えられない。けど、人の心は変わる。それが必然的に…」とも言ってらしたような。
現実を自発的に受け取り、残酷な現実を歩まざるを得ないのは分かったこと。
けど、その現実に何を思って生きるかは個人の思い次第だから。
それが帯の文にあるように、
『一筋の希望か、一寸先の闇か』
なのでしょうね。
限定盤、『羅刹国』の再録は『残』のようなもので、原曲の原型は残ってました。
リミックスは色々と面白かったです。
まだ聴き込みますよ。
DUM SPIRO SPERO アーティスト:DIR EN GREY |