藤麻無有彌の日記:||

藤麻無有彌(とーま・むゆみ)がダラダラしています。

“『FILE 080:触ってのお楽しみ』を見た。”

爆笑問題のニッポンの教養
2009年7月21日 放送。
『FILE 080:触ってのお楽しみ』を見ました。

梶本裕之(情報理工学) 電気通信大学准教授

以下、メモ↓


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触覚とは何か?

なんかの装置を頭にはめてる生徒と話す。
『ハンガーマシン』

普通の洗濯物をかけるハンガーを頭にはめると、その はめた箇所によって、首が右なり左なりに動くという。
ハンガー現象。それを機械的にやってみた。と。

生徒:「これ、何で回るかっていうのが今まで分からなかったんですが、じゃあこれを左右に向くのがコントロール出来たら、自由に こう頭の向きをコントロール出来る。」
太田:「何に役立つのかね、これ」
梶本:「だからまぁ 一種のナビゲーションには使えるだろうとは思っています。」

太田氏、実際に『ハンガーマシン』を頭につけてみる。生徒さんがなんかスイッチ押したりして。……。……。太田氏、なんか“頑張って”て、別に首 動かない…。(笑)

田中氏が替わって『ハンガーマシン』を付けると、右に左に首が(頭が)動く。

次の部屋へ。また別のものを 別の生徒さんから。
生徒:「生きているような感じを 触覚的に伝える装置。」
『生き物スピーカー』
太田氏、持ってみると カエルみたいな鳴き声(音)を出し始める。

生徒:「優しく持ってあげないと 鳴き出しちゃうので」

田中氏 持ってみると、吸い付かれる感じ という。
太田氏、また別のを持ってみたり。

生徒:「生き物の心臓の動き、鼓動の動き、あとは呼吸の動き ゆっくりした呼吸の動きっていうのを シミュレートして出力してあげている。」
梶本:「ペットロボットってありますよね。ペットロボットって外見はちゃんと動物の動きをするんですけど、持った時の愛らしさが無いんです。」


また次の生徒さんの作ったものへ。

生徒:「これはですね。鉛筆削りの触感を再現した――。まさに気持ち良さを狙って作った――…。」
『無限鉛筆削り』
実際に爆笑問題の2人もやってみる。モニターと連動して削り具合も見て取れる。ある程度鉛筆が尖ったら、また削ってない状態に戻る。

生徒:「家庭教師で…、子どもが鉛筆削り楽しそうに削っていて これずっと削れたら楽しいかなと思って。」

もう一つ、この生徒さんの作った さっきのハンガーに近いかもしれないナビゲーションの装置。
生徒:「本当に耳を引っ張って ナビゲーションをします。」
『プルナビ(PULLNAVI)』

頭になんかかぶって、そこから枝分かれした物が付いてて、その先端にあるクリップを耳にはさむ。それを田中氏が付けて、生徒さんがリモコンみたいなヤツを持って、右なり左なりに動かすと、田中氏もそっちに動いたり。

田中:「耳ってでも、ホントに体ごといっちゃう感じはありますね。」
梶本:「小さいときに耳を引っ張られた経験のせいかもしれません。」


また次の生徒さんのものへ。
生徒:「ばっさり切られる感覚を出す装置です。」
『バッサリ感 提示装置』

内側になんか丸いもののついたベルトのようなものを田中氏につける。頭にもモニターが付いてるものをつける。切られる映像が出るとか。

映像で、自分に向かって人が刺しにくる画が、
田中:「ぎゃー!」

終わってみて、
太田:「なんで作ったの?」
田中:「悪趣味だよね」
生徒:「作っていた時に病んでた。反映されちゃったみたいですね。」
梶本:「(アクションゲームで『切る側』のものは沢山あるけれど)実は切られる側も作ってやらないと、本当のリアリティは出てこない。」


移動中
田中:「楽しそうですねー」
梶本:「研究ですから 楽しくないと」

また別の生徒さんのとこへ。
生徒:「笑い増幅器っていうのを研究していまして。」
『笑い増幅器
人の体の胸んところになんか付けて、連動で人形が笑う。
生徒:「笑うと横隔膜っていうのが反応する。」
梶本:「検出した笑いを増幅してやることによって、その周りの場を良くしていく。」


別の部屋へ。先生と3人 机を囲んで座る。
田中氏、『笑い増幅器』を付けている状態。太田氏、田中氏を笑わせてみる。ホントに笑ってる時は『笑い増幅器』が反応するけど、空笑いや、ただの笑顔では反応しない。

梶本:「ある意味の うそ発見器にはなっている」

本当は くすぐりの研究をしていて…、触覚の研究なので。そこからちょっとずれて 笑いの研究みたいになった けど。

梶本:「本当におかしくて笑う場合の笑いと、くすぐりの笑いっていうのは、やっぱり違うっていうことがわかる。」
太田:「違う…っていっても……おかしくなってない?」
梶本:「あの、おかしくなっていく人もいます。笑っていくうちに  心理学で言われるんですが、悲しいから泣くのか、泣くから悲しいのか っていうのがあって。」
太田:「あぁー、どっちが先か わかんないんだ。」

田中:「気持ち的には、むかついてることもあるわけですよね。(田中氏、真面目に喋ってるのに 『笑い増幅器』が反応する。)」
太田:「何がおかしいんだよ!!」
(笑)

『笑い増幅器』を外す。

田中:「そもそも、その触覚っていうのは ま、もちろん触った感じ? っていうこととしては言葉としてはわかるんですけども。」
梶本:「そもそも 視覚や聴覚に比べると、研究が遅れているとは言われています。」

《VTR》
触覚は外の世界との境界線に存在する。グラスを触れるだけで 冷たさ、固さ、湿り気、重さなど、実に多くの情報が伝えられる。
さらに触覚は人の感情にも大きな影響を与える。
触れ合うことで安らぎを得たり、時には不快感さえも持つことになる。


梶本:「で、触覚って多分、そんなに馴染みがないと思うんですね。で、みなさんがよく見聞きしているもの っていうのは…ま、見聞きという言葉でわかるんですけど、視覚と聴覚 2つなわけですよね。テレビとかで再生されるものは視覚と聴覚。それでまぁいいわけですよね。
    だけど 触覚をそれに加えると何が出来るか というのが一つのモチベーション。もともとの動機。」

田中:「(野球とか料理とかを例に出し…ゴルフの時、“ナイスショット”とは違って、)変なトコに当たると触覚がまず最初にイラッ……。結果 飛ばないとかよりも、触覚がヤな感じ。」
梶本:「触覚っていう言葉自体、普通に使ってますけど、あれもともと アリストテレスだったと思いますけど、一番最初に人間には五感があって、っていう言葉の中で触覚っていう言葉を……。」

“人間は触覚を通して世界を認識する。”(アリストテレス

梶本:「触覚はよく 時間遅れっていう表現をするんですが、つまり 行動をしたときに触覚を提示する。0.1秒でも遅れていると、それに完全に気付いてしまって ずれた感じがしてしまう。
    実は人間の感覚の中で聴覚も速いですが、かなり速い部類の感覚 で、うちの研究室でやっているのが、主に皮膚感覚。皮膚で感じる感覚をどうやって再現していくかというのがスタートポイントになります。」

太田:「(タバコを吸う時に)煙がこう入ってくるじゃないですか ノドに抵抗感があるんですね。
    僕の中では あの抵抗感なんです。で、そう思った時に不快もそこにあるんですよ ちょっと。」
梶本:「多少 不快があると 快に変わるということはよくあります。 ですから抵抗感と仰ったのは ひょっとしたらいいキーポイントかもしれなくて  その 例えば 鉛筆削り。
    削って気持ちがいいのは ちゃんと抵抗感があるからですよね。で、ゴリゴリという音だけを聞いてみると多分あれは不快な、不協和音に過ぎないんですよ。」

太田:「これ、おれの考えですけども 何でそんなことがね、気持ちいいんだろう って。」
梶本:「多分、一つのキーワードは 能動性かもしれなくてですね。太田さんがもし縛り付けられて、そのまま煙を入れられる状況だったら、きっと気持ちよくないと思うんですよ。
    自分で吸ってますよね。で、そこが触覚でも同じことが言えて、触覚の 他の感覚との大きな違いは何か 視覚は一応 ただ見ることが出来る。音もただ聞くことが出来る。触覚は相互作用なんですね。つまり、触って、相手に触られる。
    触る 触られるの関係があって 初めて感覚が生じる。そこに気持ちよさというのは結構生じやすいとは思います。」

“『触る』には いつも『主語』がある。”

太田:「……なぜ こうやって髪を こうやったりしながら話すのか」
梶本:「それはやはり進化論的にはある程度説明がついていて おサルさんの時代からですね。皮膚の上に虫が這っていたり、あるいは皮膚の下に寄生虫がいるというような状況をまず気持ち悪いと感じないと、まぁその個体はアウトなわけです。
    で、まず気持ち悪いと感じて、そして かきむしって、かきむしった気持ちよさというか、虫が這う気持ち悪さっていうのは説明がつきます。
    さらに、先ほど こう(腕をさするようなしぐさ)仰ったんですが。サル同士のグルーミングって言われているもので、その毛繕いをするんですね サルの段階で。で、あれは毛繕いがコミュニケーションになってきて、その触覚的なこうしたら気持ちいい。あるいは、まあ抱き合うと気持ちいい、そういった感覚っていうのが生き残ってきたんだと思いますね。」


太田:「おれ、抱き枕って すげー…発明だと思っていて。」
梶本:「抱き枕 非常に重要ですね。」
太田:「おれは 40越えてから あの気持ちよさを知ったんだけど」

梶本:「あの、有名な話でですね。抱き枕に近いものをアメリカの方で開発してるものがあって、人間の体を周りからギュッと押し付ける。
    まぁ、周りから布団のようなもので押し付けると非常に安心感が出て、ですからその 周りから一定圧を加えられると 安心感が出る、っていうのはかなり一般的な話。」

太田:「ふわふわした布団が気持ちよくても やっぱり動く。止まっていると駄目。」
梶本:「能動性っていうのはそういう意味で、人間の触覚というのは特に たたいたような感じは一瞬で終わっちゃうんですが、その押されたような感覚というのも15分くらいで一定圧であれば消えちゃいます。ですからゴロゴロしないと。」

梶本:「人間は必ず どんな感覚でも慣れというのがあって、そのおかげで差に対して敏感になっているわけですね。」


田中:「映画とか、音楽とかね。視覚や聴覚のエンターテインメントは ある程度まぁ確立されているというか、今後も続くでしょうしねぇ。
    すると今度そこに触覚のエンターテインメントというのを考えてらっしゃる。対抗できるんですかね。」
梶本:「できるかどうかはまだわかりません。ただやっぱり最終的な目標は、触覚だけでエンターテインメントがちゃんと成立するかっていうところです。
    何故 音楽があれだけ成功しているか いうふうに言いますと、やっぱり2000年以上前から、歴史があって、どうやったら和音ができるか、どうやったら悲しい旋律が、楽しい旋律になるのか ということが もう理論立っているから、ちょっと悲しげな曲を作ってくださいってなると作れるようになっちゃってるわけですね。
    ですから触覚で我々がやろうとしてるのはまさにそこです。つまり世の中にあるもので こう触ったら気持ちいい…というのはあるんですが、それをもうちょっと体系化させて、最終的にそれこそ 音楽を作るように触覚をコンポーズする作品を作る ということが出来るような状況にしたい。
    ただその先に何があるのか、っていうのは楽しみですね。」


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まず、生徒の作品が何より面白そうだし、作ってる生徒さん自身が楽しそうで。良いなぁ〜って思いました。

“『触る』には『主語』がある。”とか、“能動性”っていうのは面白いですね。
自らの意思で ほかと繋がる、ほかに触れたい、ということ、多少の抵抗や不快感が、安心や楽しさに繋がる。

うん。触れるコトって、…心に触れるとかもだけど、物理的に触れるコトも、コミュニケーションで大切だなと改めて。

あと、生徒さんの作った、切られるのが体感できるやつ。あれ是非 商品化して下さい。面白そう。