藤麻無有彌の日記:||

藤麻無有彌(とーま・むゆみ)がダラダラしています。

“【清家雪子】 : 『まじめな時間 1巻、2巻』読了。”

清家雪子 著、『まじめな時間』の1巻と2巻を読みました。

2012 10 12 まじめな時間


特に買う予定とかは何も考えてなく。むしろ全然存じ上げなかったんですね。『秒速5センチメートル』のコミカライズを担当されてたコトとかも知らなくて。

キッカケはこちら↓
[外部リンク] : 『[漫画]死んでからできることって何があるかな。『まじめな時間』2巻』(正直どうでもいい)

…こちらの漫画のレビューを読ませて頂いて、レビューだけで泣いてしまいまして……。。。

これはもぉ、買おう。と。


いきなり主人公の一紗が死んでしまうところから始まるワケですが、第1話の一紗の遺影と母親の表情だけでもう涙腺がヤバい…。また2話で父親から親兄弟の身内を今まで亡くしたことがなかった中で、突然 子どもを亡くしたことが語られたとこ。
ただ状況を淡々を説明してるだけなんだけど、『突然 子どもを亡くした』という事実に対する母親の心中を察するだけでもキツい。
っていうか死んだ理由も恨みようが無いから『ただ運が悪かった』っていうのも…。

一方で重すぎない っていうか、一紗の想い人(両思いと思ってた)光晴はおバカで鈍感という…w
でその光晴が想いを向ける相手の岡部蘭子に嫉妬全開で、怨霊化しかける一紗とか。このバカっぷり。(笑)

死後にカラオケで追悼しようとするクラスメイトとか、P.118-119で献花に訪れるクラスメイトに違和感(?)を覚える一紗の気持ちの複雑さも、クラスメイトの言動もどっちもわかる。
酒井のおっさん:「あの子達も初めてでどうしていいかわからないんだろう」(P.26)



もっと悲しんで、もっと忘れないでいてほしい。
けど、いつまでも死んだ私のことに引きずられていないで、新しい生き方をしてほしい。
けど、忘れ去られるのはイヤ。
P.104-105の『小さい頃仲良かった友達』についての話もそうで。
……うーん、思い出としての記憶なんてそれまでのものだからね。生きた証が遺せるのも、証を証と理解してくれる人がいないと成り立たないものね。
沈殿した思い出が後悔になるばかりなのよねぇ。。。

1巻の描き下ろしの『フキと花』も泣ける。
『“亡くなってしまったからこそしている自分の言動”がなんかイヤ』っていうね。
過去形で話す。これから新たに刻まれることがなくなった過去の日常のやりとりを残すこと。
…なんかねー………。


2巻、
すっかり病んでしまった母親にどうにか応えるべく奮闘する一紗たちが面白い。
霊感がある岡部さんをどうにか介して意思を伝えようと試みたり、ネガティブな念しか届かないからと無理矢理ネガの念を出す大久保さんが…w
大久保さんは自分が殺したからと自責の念もあってか、一紗に求められることで応えてるけど。
またほかの幽霊の人たちも「楽しそうだから」?なのか、色んな人を次々と巻き込んで、一般浮遊霊からそろそろ成仏しそうなホトケの方々まで集めるとかw なんだろうこの幽霊のオールキャストw

酒井のおっさんの奥さんの怨念をコントロールしてるところは緊迫感があるのに『まだ早い。迂回する』とか。(笑)

と、紆余曲折を経て、岡部蘭子を通じ、一紗の母親に意思が伝わってからの、
母親が一紗の話を語り始めるところは読んでいて号泣しました……。。。

母:「他にも一紗の好きなところたくさんあるの」

そうして語られる中でのシーンの、過去の一紗のカットの中の屈託の無い笑顔や全力の表情なども胸が詰まる。。。



本編最終話となる第9話では焼死した3人の子どもの…1ばん、2ばん、3ばんと呼ばれてたコトに対する憤りとか。。。

長いこと入院してたメガネの男の子の話は……もうすぐ神様に…成仏してしまうからかもしれないけど、あまりにも達観していて。
“死自体に幸せも不幸も無いし、忘れさられることが苦しくも悲しくも無い。ただ流れていくだけ。”(P.139-140)
…ってあったけど、そこまで思えるのかなぁ…。
死んでからでも、その考えや想いはやり直しがきくものなのかな。
できれば生きてるうちに後悔やネガティブな思いは全て解消してしまいたいけれどね。

だからといって、死んでからの行為に期待しちゃあいけないけど、死んでからでもできることはある、っていう希望にはなるのかな。あぁ、でも 繰り返しになるけど、出来るだけ生きてるうちにね。

一紗のおかげで酒井のおっさんが怨霊化した奥さんと再び向き合う機会が得られたり。
玉ちゃんが幽霊になって、やや怨霊化してたのに個体を取り戻し引き篭もりを脱したり。

幽霊ってきっとその念の力に左右されてるんだろうけど、そんな幽霊同士でも影響し合ってね。
コミカルな部分もあるけど あったかくて泣ける いい作品でしたよ。



2巻には12年前の著者のアフタヌーン四季賞受賞作が。
画風全然違う…。(^^;

力を“持っている”ことに対しての優劣や駆け引きとかが面白かったです。
弱者であることの自覚や、無力であることを受容していること。とかとか。

力を所有する……ってメンドクサイなー …って思った。




ところで本作の『まじめな時間』のこのタイトルってなんだったんだろう。
個人的に思ったのは その1巻描き下ろし部分の中にあったフキの会話の中の、
「まじめな雰囲気になるのが苦手で―――…」
っていうとこに関わるのかな。

いい作品でした。
出合えて良かった作品でした。

まじめな時間(1) (アフタヌーンKC)まじめな時間(1) (アフタヌーンKC)
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清家 雪子

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