藤麻無有彌の日記:||

藤麻無有彌(とーま・むゆみ)がダラダラしています。

“【山田玲司】 : 『美大受験戦記 アリエネ 1巻』読了。”

山田玲司最新作。『美大受験戦記 アリエネ 1巻』を読みました。

幼い頃から親族に「天才アーティストだ」とおだてられ、愛されて育った 主人公・歌川有は自信過剰で絵ぇばかり描いてたけどろくすっぽ評価もされず。そして絵しかやってこなかったから、勉強も出来ない。
そんなとき、父親から進路の話を持ち出され、絵に対して“どう向き合っていくのか”を向き合い始めて…。


先ず、単純に
面白いですよ。

主人公の内面葛藤妄想暴走っぷりは相変わらずですし。けど毒が主人公には無い。
そういう感じはBバージンっぽいのかなぁ。それ以降の作品の空気では無かった。と思う。

一方で、セリフ一つ一つの反骨精神的なものや、フリーダムな感覚を誘発するようなもの(?)は絶薬を経ての山田玲司だからこそのメッセージも含んでると思う。けどこれも重過ぎないし。だからといって軽々しい・薄っぺらいという意味でも無いし。

というか、これまでの主要男キャラクターでこんなにも瞳の黒が大きく・目の星がキラキラしてるキャラっていたっけ…。アガペイズも別にそうでもない感じだったような。
主人公・有の長所であり、武器は親族に愛情たっぷりに育てられたことでしょう。

「みんなを幸せにする絵が描きたい」

というのも、これすっごい感覚的なものというか、幼少時に愛情に包まれた その感覚をもっとみんなと共有したい っていうコトなんだろうけど、それって人には通じないから。
まして愛情たっぷりに育てられてない人には(これも個人差があるんだけど、家族から愛情を受けてないワケでは無いんだけど…どこか屈折や皮肉も含んだ態度が表われてしまったりね。)幸せをカテゴリ付けて共有するとか意味が分からないワケですよ。

で、
アートのフィールドなワケですよ。
美大に合格するために美術予備校に入る”ということ自体がもうカテゴリの“振り”。
デスケルでトリミングすること(“対象”を“画面”の“正しい位置”に収めること)”自体が枠をつくってる。つくらされてる。合格するための。

(や……、素直にね、こういう展開にニヤニヤなんですよ。(苦笑) これぞ! …って感じ。)

…はいはい、
“幸せ学校”はどうしたら入学できるの?どうしたら卒業できるの?
と。

そもそも幸せが何かも分からず。
そもそも絵が何かも分からず。


描けない人が振り切ってフリーダムに描いてるのと、描ける人がフリーダムな絵を描くコトは違う…ってことに関しても、ピカソの誰もが知ってるアレな絵と、過去は写実をちゃんと描いてきたこと。
光河が写実を描けるけど、写実に対しての嫌悪のようなものとか。(これは弥生もか。)

このあたりもちゃんと本編で触れられるので、どう向き合っていくのか楽しみですね。
(描けないから描かない のと、描けるけど描かない では違う。のは当たり前だけど、“正解”の落としどころを付けるのか …っていうのが。)


先の展開で気になるのは、次巻予告に少し載ってた、「苦しんだからこそ描ける絵」というのとか、この巻にあった「人の目ばかり気にして自分を信じれない」ことが、どう混ざるのか。
速水先生の絵に大胆に線を引くこととか、フツーやらないから。やれないから。しかも期待に応えるカタチでなんて。

いやー、山田玲司作品としては期待を裏切らないですね。
つか、男女の恋愛描写なんかどーでもいーくらいなんですけど。w
夢さんへの妄想も水菜さんが出鼻へし折ってくれたり、小磯くんに有は抱きついたりして、もぉこれ博愛やんね。(笑)
しいて気になるところと言えば、みんなやさしいよね。青木先生のやさしさ のくだりじゃなくて。
高校生という思春期真っ盛りで、嫉妬も怒り・排他主義もあるだろうし、美術系でどこか閉鎖的な空間なのに、コミュ障な感じのキャラはいないし。闊達、雄弁で、適度に空気を読んでノリが合って話が通じる。変人がいない。
(偏見すぎるかもだけど。。。)
なんか底辺の高校に通って鬱屈とさえしていたのに、予備校に入って一気に友人が出来てるもんね。
これは作品を意図してそうさせてるんじゃなくて、主人公の人柄なのかしら。

美大受験戦記 アリエネ 1 (ビッグ コミックス)美大受験戦記 アリエネ 1 (ビッグ コミックス)
(2012/01/30)
山田 玲司

商品詳細を見る