爆笑問題のニッポンの教養。
2009年7月14日 O.A.
『FILE 079:味のある話』を見ました。
都甲潔(とこうきよし)九州大学大学院教授。
以下、メモ。↓
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
先ず、素材の違うもので作ってみた『それっぽい食べ物』(←?)を出される。
一皿目、『コーンスープ』……実際は温めた牛乳と、たくあんのみじん切り。
二皿目、『いくら寿司』……実際はいくらに相当する部分がみかん。
人口舌の機械で、甘味、うま味、コク、苦味、塩味 を測る。
『牛乳+たくあん』で、『コーンスープ』と比べるとその味の評価は近いものだった。
別の部屋へ。
モニターに粘菌の画。粘菌は単細胞生物だという。
都甲:「粘菌にも、味覚があることを言いたいんですね。」
画面上にて。甘いのと苦いのと交互に配置して、菌の動きを見ると、苦いのを避けて 甘いのを通って菌が動く。
都甲:「苦味は毒です。甘味は栄養源です。したがって単細胞生物は本能のまま 苦いものを避けて甘いものをとる。
ちなみに人間の赤ちゃん、苦いものを口に入れると うわっ と吐きます。甘いものを口に入れると幸せそうに感じます。」
都甲:「これ、進化と関係してます。苦味は毒だから。それを避けることができた生物が 今に至っている。味覚というのは進化を支える原動力だった。」
ノドがかわきましたね、とコーヒーを。
爆笑問題の2人はコーヒーをブラックで。
田中:「大人になってくると、苦いものを美味しいと…、食べたり飲んだりするわけですよね。ここは本能と違うってこと…」
都甲:「たぶんですね、こういった楽しい雰囲気をつくってね、こういった場でコーヒーを飲んだことが多い。
したがってそういった情報がインプットされて コーヒー、もしくはビール苦いもの ハッピーハッピー ってなって。そして
脳内快感物質が出てきて、快感を追い求めて 苦いものまでも好きになってしまった。 これが僕らの今です。」
太田:「辛いは?」
都甲:「辛味は 実はあれは味ではありません。辛味は痛いという意味です。」
太田:「痛みも快感になる人も多いじゃないですか。どんどん どんどん…。」
都甲:「あぁ〜あれは あり得ますねぇ〜」
都甲:「痛みとか辛みとか、脳内からそれを抑えるために快感物質が出るんですね。」
田中:「だから癖になるんだ。」
太田:「じゃあ 辛いのがやたら好きなヤツってのは…」
都甲:「それはですね 戦後すぐ 栄養源をみんな求めたために甘いものを欲しがった。 それから次…、ある程度刺激のあるものとして、塩分…、それから辛み。」
田中:「そっか、よくわかるわ。チョコレートの後はポテトチップ食べたくなるもん。」
田中:「マヨラーとかでもね…」
都甲:「マヨラーは理由があります。マヨラーは油。 油は脳内快感物質が出ます。あれはいわゆる、 や み つ き になります。」
太田:「マヨネーズ…」
都甲:「油はどんどん欲しい、どんどん欲しい。摂って しかも太る。」
太田:「(田中を指して)油 大好き。」
都甲:「さすが進化した人ですね。」
田中:「ポテチにマヨネーズ、そしてチョコレートの無限ループ。」
都甲:「快感を追い求めてますね。いや でも自分の本能に忠実ですね。」
太田:「そうすると、本能のままいくと太っちゃう だから本能のままいった 甘いヤツらは生き残った ってのはちょっと…」
都甲:「厳密に言いましょう。今の場合の本能は 人間としての本能ということです。大脳を持った人間の本能 という意味です。粘菌の本能じゃありません。」
太田:「そこは人間だけが違うんだ 他の生物とは」
《VTR》
人の味覚には脳内での新しい脳と、古い脳 2つの勢力のせめぎ合いがあると考えられている。その原始的な特徴を古い脳は受け継いでいる。
一方、人類が進化の中で発達させてきた新しい脳には、苦味に喜びを感じた経験が刻まれてゆく。
徐々に新しい脳が古い脳に影響を与え、人は苦いものでも好きになってしまうのだ。
都甲:「人間の感性、嗜好性というのは 単純な古い脳で操られる世界に新しい脳の世界がミックスしている。」
都甲:「人間は味だけじゃなくて、目・鼻 全部総動員して」
田中:「あと 歯ごたえね」
太田:「味覚センサーで たくあんと同じだったけど 我々とちょっと違うな って思ったのは、 鼻に抜ける感じとか そこが違うんですね。」
都甲:「仰るとおり。 だから鼻をつまむと意外とやっぱ似てる 味覚センサーは味しか表示しないので。
これがやっぱり こっち(鼻)も入るし こっち(目)も入るし。」
田中:「鼻つまんで、目隠して飲んでる ってこと」
都甲:「ちなみに視覚は、目は 新しい脳しか使いません。」
太田:「苦いものを避けて甘いものを摂取する粘菌みたいなものとくらべると、人の味覚は、もう格段の複雑さがあるわけじゃない。しかも見た目もあるし、経験も常に変わっていくわけで…。
流行り廃りなんてのも…、世間でこの味がいま流行ってるとかっていうのも、ずうっと歴史で変わっていくわけで、そうするとさ、生存ということとはもう関係なくなってくるのは…。」
都甲:「はい、正解。
人間は、もはや味覚を生存と関係ない、趣味の領域に引き込んでいます。単細胞生物の粘菌の味覚は、生き死に関わります。でも僕らは、進化しまくっちゃって、あとは舌が味わってうれしいか、というだけになっている。もう僕らはいまや、あまり舌を使ってないですね。」
太田:「うん うん。むしろ情報のほうが勝ってる。」
都甲:「例えばコシヒカリがありますね。どこどこ産コシヒカリって、えらく人気ありますよね。それをDNA鑑定してね、これは本物とかウソとか言いますよね。でも人間が味わって区別がつかなかったら、それでいいじゃないですか。どうしていちいち、どこどこ産コシヒカリにこだわる必要がある。情報が勝ってるんです。
自分の舌を信用してほしい。もっと古い脳を生かしてほしい。今の人間は進化しすぎて新しい脳しか使ってない。情報ですよ。これは間違ってる。もっと自分の舌を信用する。」
太田:「じゃあ、先生の機械は…」
都甲:「機械だったら、どこどこ産コシヒカリ、どこどこ産コシヒカリ
で味に差が無ければ、ブランドがあろうが無かろうが 同じ味が出ます。これは面白い。つまりブランドなんか関係ない という世界ができる。」
太田:「それこそさっきのあれじゃないけど いわゆるブランドの情報が頭に入るということで、やっぱり微妙に味覚が変わってるっていうことでしょ。」
都甲:「そういうことです。人間が変わるんです。」
太田:「でもそれが 味覚ってものだったんじゃないのって話じゃない…。」
都甲:「僕らは。でもそれは問題あるんじゃないか。もうちょっと古い脳を使ってもいいなじゃないか、と。」
太田:「僕は 味 そんなこだわんないほうなんですよ。」
都甲:「はい。」
太田:「食べ物別に…なんでも食べるし。ただ最近思うのは、美味しいとか不味いとかよりも、食ってて 気持ちいい…。
僕はね 豆腐が一番好きなんですよ。そうするとね 先生 、豆腐を食ってて一番感じるのはうまいとかじゃないんですよ はぁ〜気持ちいい。っていうことなんですよね。
気持ちよさ なんですよ。僕にとって 食べ物の基準。
たとえば部活のとき…学生のとき ノドからからで飲む水ってうまいじゃないですか。うまいっていうよりも、体が欲していると思う幹事。味以上にそっちの方が重要。」
都甲:「要するに味覚に特化しないんですよ。僕ら文明人の場合には。味覚とか、嗅覚とか特化していくんだけども… 特化してません ね。 真っ当だと思います。」
田中:「先生もともと…」
太田:「先生の研究の先には何があるんですか?」
都甲:「こういった味を測定する装置をつくることによって ま、全世界の地球上に 味の尺度。味のものさしを作りたい。」
都甲:「このコンピューター(手元のノートPC)3kgあるんですよ。重いと軽いというのは人の主観なんです。ところが3kgというのは客観。
味の世界には主観しかないんです。そういった世界に初めて客観的な物差しを持ち込むと文化がどう変わるか。私はそれを見届けたい。
僕は食譜といいます。食品の楽譜。」
先生の研究のキッカケはにんじん嫌いからだという。奥さんがみじん切りにしてハンバーグに入れたのがキッカケで食べれたため。その衝撃を受けたキッカケだと。もともとは電子工学を専攻していたという。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
日本酒にね、『日本酒度』っていう味の基準を表すものが表記されてる場合があるんですね。プラスの数字が高ければ辛口で、マイナスであれば甘口で。さらに酸度によってまた味が違うらしいのですが。
都甲先生はこういう味の客観的基準を作られたいというコトでしょうか。
どうしても人によって、体調によって日本酒の味の感じ方も違うということなのですが、これは大変なことですね…。
あと苦味のものをを食べれるようになったコトの理由は面白かったですね。
味の客観的基準があると、その食品を食べたことのない人に味の説明が出来る、というのは面白いかもしれません。でも、脳がはたらく以上、味そのもの以外の複合的な理由が重なるのは必然なのでしょうが。
この前のオーラの泉で美輪さんが箸を替えて食事を楽しむ、というのも一つの理由となると思いますので。
なんにせよ楽しく、美味しく食べれたら良いのではないでしょうか。